みなさま

 

次々現れるコロナ変異株と異常気象は悩ましい限りですが、

くれぐれもご自愛ください。

さて、今月は私たち、日本国際ポスター美術館の顔として大切にしているポスターと

 

それにまつわるこぼれ話、お楽しみください。(山田)

Ogaki Poster Museum, JAPAN

「日本国際ポスター美術館」

1996, 728x1030cm

ミェチスワフ・グロフスキ

 

Mieczysław Górowski(1941-2011)

 日本国際ポスター美術館がオープンした頃、私は大学生だった。学校へシルクスクリーンなどでプリントされた大きなB1サイズの展覧会告知ポスターが度々送られてきており、壁に貼られるのを楽しみにしていた。
 その頃美術館ではボランティアスタッフを募集していて、デザインの先生に「行ってみたらどうか」と勧められたのが交流の始まりだった。スタッフとして通い始め、「日々目にする広告」などと全く文法の違う世界のポスターアートに数多く触れるうちに、「世の中にはこんなにも違う世界観がある」ということをゆっくり飲み込んでいった。中でもポーランドのポスターは独特で異様だった。グロテスクで痛そうな、けれど幻想的でファンタジーのような、その描写。

 

 グロフスキによる日本国際ポスター美術館のオープニングのポスターは、ディレクターとして関わっていた松浦先生の依頼によって実現した。B5サイズぐらいの原画が3枚ほど郵送されてきて、その中から1枚を選び、B1サイズに引き伸ばしたと聞いている。
 絵は不透明な絵具を厚く塗り重ねてあり、ガーゼのようなマチエール(素材感)が暖かい印象だ。「O」の形の穴の中から男性の顔がちょっとだけのぞいており、手に持つ蓋(?)に、顔のような、パレットのような穴が開いている。ポーランドの独特な雰囲気は残っているが表情などは明るく、いたずらっぽい印象を受ける。
 これが日本の大垣のポスター美術館のポスターか、というと、私の中ではぴったり来ない印象なのだが、その違和感がとてもゆるくて、それがまた豊かで大好きなポスターだ。

企画/山田信子(日本国際ポスター美術館ディレクター)

 

テキスト・ポーランド広告塔百景/宮川友子(グラフィックデザイナー、大垣女子短期大学講師)